若者のテレビ離れ。我が家や周りでも実感するが…
忘れもしない長男の中学最後の三者面談。
三年でしかも最後となると、それは受験前の大事な時期になる。
担任、長男、保護者である私で、
現在の学習状況や最終的な進路希望の確認などを行う。
そんな差し迫った時期にも関わらず、長男はテレビばかり観ていた。
現実逃避だろうか。
その年、なぜかそれまで興味を示していなかったプロ野球にはまり、
試合はもちろん、その日のプロ野球ニュースも欠かさずチェックする。
秋の特番を録画予約し、楽しげに番組を観る姿を目にするたびに、
イライラしていたのを覚えている。
おい、そのエネルギーを受験に向けなさい!と。
もちろん、勉強をたくさんしている合間の息抜きならいいが、
そんなはずはなかった。
だから三者面談で家庭での様子を聞かれた時には、
この状況を呆れながら担任に伝えた。
担任は、40代位のどこにでもいるような地味な感じの女性の先生だった。
いかにも国語の教師らしいという風貌でメガネをかけて小さかった。
担任は私の愚痴を聞いて、次のように淡々と言った。
「この時期にそれはいけませんね。
合格したいなら頑張らないといけないのは分かっていますよね。
テレビはしばらくは我慢しないといけないのではないでしょうか。」
そう幼い子供に言い聞かせるようにゆっくりと話しをし、
長男も気まずそうに頷いた。
続いて私は、
「私もテレビをつけてしまう習慣があって。
それもいけないとはわかっているのですが、つい。
他の家族もいますし難しいですが、
しばらくは協力しないといけませんね。」といった。
すると今度は担任が、
「テレビがない生活も慣れますよ。
実はうちはテレビを観ないんです。
子供も二人いますが、ない生活にも慣れますよ。
それはそれで問題かな、という時もあるのですが。」
と話してくれた。
ちなみに子供さんらはどのように家で過ごしているか聞いてみると、
本を読むことが多いという。
短い面談が終り、帰宅路にその話を切り出した。
「先生すごいね、テレビのない生活を送るって。
私はテレビっ子だったし、無理だわ~。」というと、
長男は、
「先生さ、野々村議員がすごい泣き方していたのを知らなかったし、
賞味期限切れのマクドナルドのチキンマックナゲット騒動の
あの映像も知らんかったんよ。」
と、苦笑しながら話していた。
どうも教室でこのような話題になった際に、
生徒達と担任で、何かしらを共有できなかった場面が多かったようだ。
確かにそれは問題だろうな、と思った。
私が勤めていた会社にも、テレビを何年も見ていない、
という若い子が何人かいた。
ニュースはネットで事足りているし、全く問題ないという。
しかしそういう子達は、物事をあまり知らない…という
イメージがついていた。
たわいない会話の際、流行のものに疎かったのだ。
え~!?この曲知らないの?よくCMで流れているじゃない?
あのタレント知らないの?今人気でよく見かけるけど。
会話の途中で、何度も目にした周りのリアクション。
しかし彼らは、そのCMを知らないし、
テレビにどれだけ出ているかも知らない。
同じ温度で、話題に入れなかったのだ。
翌年、一人はテレビを購入したと言っていた。
朝のニュース番組以外はあまり観ていないと言っていたが、
それでも全然変わったはずだ。
テレビはテレビでしか伝わらないものがある。
新聞やラジオ等、ニュースや他の情報を得る手段はあるが、
映像で伝えるインパクトを表現できるかと言えば、
私は難しいと感じる。
今はスマホやネットで簡単に動画も見れるが、
自分が見たいと思う情報しかクリックしないだろう。
テレビ離れやテレビ不要論が話題になっている。
正直、私自身テレビの視聴時間はかなり減った。
テレビをつけても面白い、ワクワクするというものがない。
番組が面白くないのか、受け取り手の私の変化が大きいのか。
けれど、テレビはなくならないと思うし、なくなってほしくない。
なんだかんだ言っても、やはりまだまだ
周りとのコミュニケーションを図る最強のツールだと思うから。
昔と違い、家族とのチャンネル争いはなくなってしまった。
私だけでなく子供らもみたい番組がないようだ。
今は動画ばかり見ている。
各自で好きなものを観れるのは良いが、
家族での共通コミュニケーションが減ってしまったように思う。
だから今は、ニュースでもいいから、一緒に見れる機会には、
話題にして会話を増やすことを心がけるようになった。
次は二男の三者面談。
動画ばかり見て全く勉強しないんですよ…と愚痴ることになりそうだ。